ちょっと不思議な話Pt.3・5

さあ昨日の話の続きからはじめよう

その年の春辺りから俺は窓の外を頻繁にスズメバチが飛ぶのを見ていた

それに何故か少年時代からスズメバチによく遭遇し威嚇されたのを思い出した(この話はまた後日話すことにしよう)

予期せぬ天敵の突然の訪問に一瞬パニックになったが何か打開策を考えねばと回らぬ頭で一生懸命考えた

だが二日酔いの俺にいい案は何も思いつかなかった

その間も凄い勢いでスズメバチはドアに体当たりを繰り返してきた

間違いなく俺を狙っているのがわかった

ふとこのまま昼前の迎えが来るまで浴室で休みながらスズメバチが去ってくのをじっと待った方がいいんじゃないかとか一気に寝室まで走って逃げ扉を閉め1分でも早く寝た方がいいんじゃないかとか弱気な考えがちらついた

だが気を取り直しどうにか戦うことにした

浴室を見回してまず思いついたのは桶に水を入れてそこにシャンプーやせっけんを泡立てそれをスズメバチにかけるという作戦だった(ふざけてるように思われるかも知れないがその時の俺は本気だった)

意を決してドアを開け飛んでるスズメバチに何度かそれをかけてみた

が効き目はなくすぐに諦め慌てて扉を閉め浴室に戻ることに

さらにスズメバチは勢いを増してドアに体当たりを繰り返してくる

桶のせっけん水を全部一気にかけようとも試みたがその後の脱衣場の始末が頭にちらつき手のひらでせっけん水をパシャパシャとスズメバチにかける行為が滑稽に思えてきた

このままでは一向にらちがあかないと次に選んだ武器(?)はバスマジックリン

タイミングを見計らいシュッシュ攻撃開始

確実に何度か命中させたがこれもまた思ったよりも効き目はなかった

マズイ!浴室にはもう武器になりそうな物が見当たらない完全に手詰まりになった

絶望感が俺を襲った

早く休みたいのに大の大人が30分以上たった一匹のスズメバチに何をやってるんだろう?って考えた

それも全裸で

考えれば考えるほど馬鹿らしくなった

だが慣れと開き直りは怖いものだ

30分以上の極限状態で戦いすぎたせいか?(ちょっとオーバーだけどその時はかなり本気だよ)

だんだんスズメバチが憎くなり怖くなくなってきた

大きく深呼吸をして最後の賭けに出ることにした

秒読み開始3.2.1そして浴室のドアを一気に開けて右手にかかっていたバスタオルをとりそれを広げてスズメバチにプレッシャーをかけ続け脱衣場からリビングまで追い払うことに成功

そのまま寝室まで逃げ込んだ

さすがのスズメバチも突如「ウオォー」と奇声を発っし

守から攻に転じた俺の勢いに機先を制されなす術もなくただ後退していった

そのまま寝ようとも思ったが一度勢いに乗ってしまった俺は雑誌を丸めてそっと寝室のドアを開きリビングを見渡した(勿論まだ全裸で)

するとカーテンの内側にスズメバチが見えた

思いもよらぬチャンス到来に興奮した(多分小さくガッツポーズをとったと思う)

そうして気配を消して再びバスマジックリンを浴室から取り出しそっとリビングのカーテンの方へ近づいて行った

左手でカーテンを抑え身動きのとれなくなったスズメバチにこれでもかと右手で横に持ったバスマジックリンを連射した

どれだけ撃ったろう?かなり撃ち込んだと思うついに力尽きたスズメバチは硝子をつたって落ちていった

そこまで見届けたところで急に緊張感がとれ疲れがどっと出た

もうトドメを刺すこともそれを片付けることもどうでもよくなった

何しろ休みたかった

まるで映画のラストのようだった疲れはてた戦士を

寝室の東側の窓にかけたカーテンの隙間から漏れる太陽がまるで身体中にキスをするように優しく包んだ

俺はすべてから解放されやっとパンツを履いて寝ることが出来た

そしてそのまま無事にPV撮影の2日間が過ぎた

撮影が終了した次の日のお昼、温泉帰りの母がお土産を持ってきたついでにパスタを作って一緒に食べていると突然母が2日前に長野のある温泉に行った時、脱衣室でスズメバチに遭遇し濡らしたタオルでそれを退治した話をしだした

それを聞いて俺も2日前のスズメバチ騒動を思いだしそれを今度は母に話した

さらにそこのカーテンの下に多分亡骸があると言いながら席を立ちカーテンの下を見た

「んっ!?」

一瞬自分の目を疑った

なんとそこには大きなスズメバチの亡骸が2匹横たわっていた

何故二匹なんだろう???????

謎は深まるばかりだ

今になっても不思議でしょうがない

いろいろ考えた結果3つの仮説をたてた

まず一つ目は脱衣場でのスズメバチとカーテンの中にいたスズメバチは別だったという説(でも何故一緒に並んでいたかはわからないがもしかしたらお互いに呼びあい動ける方がカーテンの仲間に近づいたのかなとかなんとか)

二つ目はバスマジックリンを大量に浴びたあと瀕死の状態で他の仲間にSOS信号を出した1号(仮に)が2号を呼び2号の懸命なマウスtoマウスもむなしく1号は息絶えその悲しみも束の間2号もバスマジックリンの毒に侵され後を追ったという説

三つ目は時空を越えて長野のとある温泉の脱衣室からもう一匹はやって来たという説

不思議でしょう?

いまだに答えが出せないんだ

以上、ちょっと不思議な話Pt.3・5を終わりにしたい

ちえい

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